老子


2020-07-24

「老子」紹介


第8章


最上の善なるあり方は水のようなものだ。水は、あらゆる物に恵みを与えながら、争うことがなく、誰もがみな厭だと思う低いところに落ち着く。だから道に近いのだ。

身の置きどころは低いところがよく、心の持ち方は静かで深いのがよく、人とのつき合い方は思いやりを持つのがよく、言葉は信であるのがよく、政治はよく治まるのがよく、ものごとは成りゆきに任せるのがよく、行動は時宜にかなっているのがよい。

そもそも争わないから、だから尤(とが)められることもない。


訓読文

上善(じょうぜん)は水の若し。水は善く万物を利して争わず、衆人(しゅうじん)の悪(にく)む所に処(お)る、故に道に幾(ちか)し。

居(きょ)は地を善しとし、心は淵を善しとし、与(まじわ)るは仁を善しとし、言は信を善しとし、正は治を善しとし、事は能を善しとし、動は時を善しとす。

夫れ唯だ争わず、故に尢(とが)無し。


第43章


世の中でもっとも柔らかいものが、世の中でもっとも堅いものを突き動かす。形の無いものが、すき間のないところに入っていく。


訓読文

天下の至柔(しじゅう)は、天下の至堅(しけん)を馳騁(ちてい)し、無有は無間に入る。


出典

蜂屋邦夫 訳注「老子