作家・山崎豊子さん 第63回毎日出版文化特別賞受賞あいさつ
私がこの年まで書けてきましたのも、あの……。男子学生は雨の中、ザクザクと足音を立てて出陣していきました。私たち女子学生は徴用されました。私も弾磨きをいたしました。人を殺す弾を磨きました。
あまりの苦しさに、さぼって自分の部屋でバルザックの「谷間の百合」を読んでおりましたら、担当将校に見つかって殴られ、倒れてしまいました。その日から、私の書く方向をはっきり覚悟しました。
今、神様が、お前に何かをやるから言ってみよと言われたら、私は失われた青春を返してくださいと言いたいです。繰り上げ卒業でちゃんと勉強できなかったことと、小説も読む時間が少なかったこと。もっと勉強したかったという一言でございます。ありがとうございました。
毎日新聞 2013年11月25日 「さよなら、山崎豊子さん 徹底取材、闇照らす」
2009年に山崎豊子さんが小説「運命の人」で毎日出版文化特別賞受賞を受賞したときのあいさつです。全身の痛みをおして大阪堺から上京し、贈呈式に出席、公に姿を見せた最後となりました。
私がこの記事を読んだのは2013年。高校2年生のときです。胸にジーンときて泣きそうになりました。悔しい思いをしたのは彼女だけでなく、他にもたくさんいたと思うと悲しいです。勉強できるのはありがたいことだと思いました。
2017年ノーベル平和賞受賞講演
ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)事務局長・Beatrice Fihn核兵器禁止条約は、この世界的な危機の時にあって、未来への道筋を示しています。そ れは、暗い時代における一筋の光です。
そしてさらに、それは私たちに選択を与えています。二つの終わりのどちらをとるかという選択です。核兵器の終わりか、それとも、私たちの終わりか。
前者の選択を信じることは、愚かなことではありません。核を持つ国が武装解除できると考えることは、非理性的なことではありません。恐怖や破壊よりも生命を信じることは、理想主義的なことではありません。それは、必要なことに他なりません。
初めて新聞でスピーチを読んだとき、衝撃を受けました。私はそれまで「やっぱり核兵器や抑止力は必要なのかな」と思っていましたが、彼女のスピーチで考えが変わりました。今、地球のすべての人が核兵器の危険にさらされています。核兵器廃絶は理想論ではなく理性的な選択です。
ICANの人々は世界を動かし、2021年核兵器禁止条約が発効されました。これは驚くべきことです。
ただし、核兵器保有国、日本をはじめとする核の傘下の国々は批准していません。まだ道半ば。人々の意識を変えなければなりません。
私にできることは何だろうか、と考えています。→戦争と平和を考えるページを作りました。