理想に従う

大学時代に読んで感銘を受けた「それでもなお、人を愛しなさい 人生の意味を見つけるための逆説の10ヵ条」を読み返していました。この本は自分の良心に従って生きることの大切さを説いています。良心に従うことで生きる意味を見出し、他人や社会からの評価とは無関係に充実感と自由を得られる、と。

私の日常生活において自分の良心を試される場面がときどきあります。他人が私に失礼な態度や舐めた態度を取ってきた場合、私がどのように反応するかという問題です。

私は気の強い母の血を半分受け継いでいるせいか、修羅の国・北九州で育ったせいか、失礼なことを言われたら舌打ちしたくなりますし、同じようなことを言い返したくなる衝動に駆られます。でも、そこをグッとこらえ、相手を貶めずあくまでフェアに主張するようにしています。

これは私の選択の問題なのです。相手が私に失礼な態度を取ったからといって、私が相手に失礼な態度を取っていいことにはならない。相手が失礼な態度を取るのは相手の問題。私が相手と同じレベルにまで下がるかどうかは私の問題なのです。

苛立ちを飲み込んで自分のルールを守るのはいつも骨が折れます。怒りに任せて好き放題に振る舞えたらどれだけ楽かと考えてしまいます。でも、私にとっては常にフェアに振る舞うことが、一瞬のストレス発散よりも大事なのです。こういった自分のルールを守る言動が積み重なっていくと、自分自身がすごく強くなっていく感覚があります。「こんな人間になりたい」という理想があって、その理想と言動が一致すればするほど自信がついてきます。私は理想に従って生きられるのだと実感できます。

理想に沿った言動と衝動的な感情の間で揺れるとき、よく映画「グリーンブック」のワンシーンを思い出します。

「グリーンブック」あらすじ

1962年、人種差別が色濃く残るアメリカ南部。粗野で無教養だが腕っぷしの強いイタリア系用心棒のトニーは、黒人天才ピアニスト、ドクター・シャーリーのコンサートツアーの運転手として雇われる。育ちも性格も正反対の二人は、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに旅を続けるが、行く先々で理不尽な差別に直面する。

私が思い出すのは、人種差別的な言動をした警官に対しトニーが腹を立てて手を出し、二人とも留置場に入れられてしまったときにドクター・シャーリーがトニーを諭すシーンです。

You never win with violence, Tony. You only win when you maintain your dignity. Dignity always prevails.

暴力で勝つことは決してない。尊厳を保ち続けた時こそ勝利を手にできるんだ。最後には必ず尊厳が勝つのだ。

Dignity(尊厳)という言葉が心に残っています。つまり、これは自分の尊厳の問題なんです。どんな状況でも自分の態度を自分で決められれば私の勝ちだし、状況や他者に支配されれば私の負けなのです。不合理な世界でドクター・シャーリーが自分自身のあり方にこだわる理由がよく分かります。

私は過去、周りの環境から善を信じられない時期もありました。良心に従うなんて偽善だと思うときもありました。でも、今は人は自分の理想に従って生きられると思っていますし、理想に従うときこそ大きな自由を感じられると思います。自分の言動を完全にコントロールする境地にはまだ達していませんが、そこを目指して日々精進していきたいと思います。