2026-01-02 秋の始まりは風で感じる
2026-01-02 秋の始まりは風で感じる
「新古今和歌集 全評釈」の秋歌を読んでいました。春夏秋冬どの季節の歌も、その季節の始まり→盛り→終わりという順序で並べられています。秋歌を読み進めるうちに、秋の始まりは風の歌ばかりだと気づきました。秋の訪れは涼しさや虫の音、葉の色で捉えるものと思っていたので、風は意外でした。平安の歌人にとって秋のシグナルは、肌に触れる風のわずかな変化だったようです。
神南備(かむなび)の 御室(みむろ)の 山の葛(くず)かづら 裏吹き返す 秋は来にけり
神南備の御室の山の葛の葉裏を風が吹き翻す秋はやって来たなあ。
いつしかと 萩の葉向けの 片寄りに そゝや秋とぞ 風も聞ゆる
早くも萩の葉を片方に向け靡かせて、そそと風が吹く。その音は「それ、秋なのだ」といっているように聞える。
この寝ぬる 夜のまに秋は 来にけらし 朝けの風の 昨日にも似ぬ
この寝た夜のうちに秋はやって来たらしい。寝て起きた早朝の風は昨日とは似ていない。袂に涼しく感じられる秋の初風だ。
いつも聞く 麓(ふもと)の里と 思えども 昨日に変る 山おろしの風
山おろしの風はこの麓の里でいつも聞いているとは思うけれども、立秋の今日はそれが昨日とは変って聞こえるよ。
吹く風の 色こそ見えね 高砂(たかさご)の尾上(おのへ)の松に 秋は来にけり
吹く風に秋らしい色は見えないけれども、高砂の尾上の松に秋はやって来たのだなあ。
伏見山(ふしみやま) 松の陰より 見わたせば 明くる田の面(も)に 秋風ぞ吹く
伏見山の松陰から見わたすと、夜が明けてゆくのにつれて明るくなってゆく田の面に秋風が吹いているのがはっきり見える。
立秋・初秋(285-290、293、294、301、302)
秋の初風(291、292、295、296、298-300)
露(297、310-312)
荻の葉風(303-305)
松吹く風(306、370)
秋風(307-309、371、372)
七夕(313-327)
萩(328-334、351)
秋の野の花(335、341、342)
女郎花(おみなえし)(336-338)
蘭(ふじばかま)籬(まがき)の花(340-350)
朝顔(歌題では「槿」と書く)(343、344)
苅萱(かるかや)(345)
薄(すすき)(346-350)
荻(352-356)
秋の夕(357-366)
秋思(しゅうし)(367-369)
野の風(373、374、378)
稲妻(376、377)
月(375、379-436)
秋きぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる
秋が来たと目にははっきり見えないけれど、風の音を聞いて(秋が来たと)気がつきましたよ
藤原敏行
ネットを調べていたら「風におどろく歌人たち」という記事がありました。やはり、秋の始まりは風でとらえるのですね。
(余談)風と秋といえば、松田聖子の歌で「風は秋色」という曲があります。正直なところ秋は感じられませんが、最初からハイテンションで盛り上がる曲です。
La La La Oh ミルキィ・スマイルあなたの腕の中で旅をする Oh ミルキィ・スマイル 抱きしめてやわらかなその愛で