好きな本2023


2023年に読んだ本ベストは「香山哲のプロジェクト発酵記」(香山哲)です


目次

1 新・ジャンル別  洋書ベスト500プラス

2 これは経費で落ちません!10巻

3 ここからはじめる自作キーボード

4 スパあんこうの胃袋

5 香山哲のプロジェクト発酵記

6 シャーロック・ホームズの冒険

7 ドラゴンライダー外伝 アラゲイジアの物語

8 これは経費で落ちません!11

9 クコツキイの症例

10 自分でつくるAccess 販売・顧客・帳票管理システム

11 映像制作のための自宅で整音テクニック

12 桜井政博のゲームについて思うこと

13 映像研には手を出すな!

14 クレイジー・リッチ・アジアンズ

15 環と周

16 大奥1-3

17 愛の旋律

18 経理になった君たちへ


1新・ジャンル別  洋書ベスト500プラス」渡辺由佳里

<キーワード>洋書
<あらすじ>「古典」「文芸」「ミステリ」「SF・ファンタジー・ホラー」「ラブロマンス」「児童書」「ノンフィクション」の7つのジャンルに分けて洋書を紹介。英語レベル表示、R+(成人向けで特に性的・暴力的表現が強いもの)など適正年齢の目安も表示。

<感想>

・Amazonで洋書を探しているとレビュー欄で何度も出くわすのが渡辺由佳里さん。私は彼女を「洋書界の天沢聖司」と呼んでいます。

・私は「古典」「文芸」「ノンフィクション」のジャンルを中心に読みました。有名な本も含まれていましたが、初めて知る本のほうが多く参考になりました。日本語翻訳版もあわせて紹介されているのでありがたいです。


2これは経費で落ちません!10巻」原作:青木裕子 漫画:森こさち

<キーワード>経理 社内恋愛
<あらすじ>石鹸会社で働く森若沙名子は、入社5年目の経理。「イーブン」をモットーにきっちりと数字を合わせ、スケジュールを調整する、過不足も隙もない完璧な生活を送っている。そこに一石を投じたのが、営業部エースの山田太陽。ちょっとお調子者な太陽にペースを乱されて最初はイラついていた森若でしたが、ある出来事をきっかけに急接近。クールな森若さんが、初めての恋にオロオロする様子はとてつもなくカワイイ。2人の関係性もさることながら、つじつまの合わない経費の真相など経理部ならではの視点で解明される独特の謎もユニーク。天天コーポレーションで働くサブキャラもいい味を出している。

<感想>

恋愛ものは映画も本もあまり見ませんが、ときどきはキュンキュンを摂取する必要があります。私は「自立した、強い女性が恋に落ちていく」という展開がすごく好きです。一番好きなのは、「図書館戦争」の手塚光と柴崎麻子の組み合わせ(手柴)。本書の森若沙名子と山田太陽は、その次くらいに好きかもしれません。手柴とはまた違った感じですがこれも良いですね。森若さんがとても可愛い。


3ここからはじめる自作キーボード」riconken

<キーワード>自作キーボード
<あらすじ>本とキットが一緒になった、自作キーボード入門セット。ハンダ付けなど組み立てに必要な基礎知識を解説している。

<感想>

秋葉原の自作キーボード専門店・遊舎工房を見に行ったときに置いてあった本書を買いました。

私はキーマップをカスタマイズできる点に自作キーボードの魅力を感じていたのですが、Youtubeの関係動画を見ても組み立て方の説明ばかりでソフトウェアについてあまり情報がなく、不満に感じていました。本書はQMK Congifuratorの設定方法・レイヤーの考え方を説明しており、参考になりました。高度なカスタマイズとして、C言語で書かれたファームウェアのプログラムを直接書き換える方法の説明まであります。満足しました。

そのうち自作キーボードに挑戦してみたいと思います。


4スパあんこうの胃袋」あきばさやか

<キーワード>漫画

<あらすじ>他人に優しくしたり誰かのために頑張る人が訪れることができる御褒美の世界。街にひっそりさまよう深海魚たちが、不器用なお人好しさんをあんこうの胃袋へ誘います。スパの中はご褒美ワンダーランド。スパに癒されながら、本当の自分を取り戻していく8つのストーリー。

<感想>

・noteで見つけた漫画家さん。

・心がホッとする短編集。頑張っている人が別世界のスパあんこうに連れて行かれ労ってもらえるお話。


5香山哲のプロジェクト発酵記」香山哲

<キーワード>漫画 プロジェクト

<あらすじ>漫画家・香山哲が、次なる連載企画を「プロジェクト」と捉え、そのアイデア段階から計画をじっくりと進めていく様子を公開。マンガ制作やものづくりだけではなく、勉強、仕事、趣味、生活……、人生にやってくる「プロジェクト」に関わるすべての人に贈るプロジェクトの進め方。

<目次>
・第1回人生はプロジェクトの連なり
・第2回何のために実行するのか
・第3回ざっくりアイデアを作る
・第4回エッジを整える
・第5回登場人物たちを考える
・第6回読者を考える
・第7回編集者と意見交換する
・第8回アイデア倉庫を使う
・第9回創作として肉付けする
・第10回自分のリソースを考える
・第11回連載全体を仮確定する
・第12回いいスタートのために
・第13回不安や心配を整理する
・第14回完成後をイメージする
・第15回信頼できる人と話し合う
・第16回自分をスパークさせる
・第17回発酵具合を見極める
・付録1 連載というかたちについて
・付録2 業績について

<感想>

・私は「趣味でこういうことやってみたいな」というアイデアがいくつもあります。それらのプロジェクトをより面白くするため、成功確率を上げるためにできることや考え方が分かりました。自由な発想を大切にしつつ、プロジェクトを管理する視点が良かったです。

・個人的なプロジェクトを持っている方におすすめしたいです。

・漫画の絵がいい。個性的で味わいがある。


6シャーロック・ホームズの冒険」Conan Doyle、大久保康雄訳

<キーワード>シャーロック・ホームズ 大久保康雄

<あらすじ>名作の誉れ高い「ボヘミア国王の醜聞」「赤毛連盟」「まだらの紐」等12篇

<感想>

・シャーロック・ホームズはさまざまな翻訳がありますが、大久保康雄氏の翻訳が一番好きです。この人の翻訳は、賢く、切れが良く、深い。ホームズの雰囲気にぴったりです。

第一話 ボヘミアの醜聞

シャーロック・ホームズにとっては、彼女はいつも「あの女」だ。ほかの名で呼んだことなどめったに聞いたことがない。ホームズの目には、ほかの女性はすべて色あせた影のうすい存在としか映らないのだ。

とはいうものの、彼がその女アイリーン・アドラーに恋愛じみた感情を抱いていたというわけではない。冷徹で的確、しかも、みごとに均斉のとれた彼の精神にとっては、あらゆる感情、とりわけ恋愛感情などは、まるで無縁の存在なのだ。いうならば彼は、推理や観察にかけては世に比類のない完全な機械だが、恋人役としては、まるで不適なのだ。人間の優しい感情について揶揄や練習を交えずに語ったことは一度もない、優しい感情は、はたから見ても、それなりに美しいもので、人間の動機は行動をおおうヴェールをとりのぞく、すぐれた効用がある。

しかし、習練をつんだ推理家にとっては、微妙に調整された精神状態のなかに、そのようなやさしい感情がはいりこむのを許すならば、迷いを生じさせ、その精神活動を鈍らせることになるだろう。彼のような天分の持主が、なまじ慈愛のような烈しい感情のとりこになったら、精密機械に紛れ込んだ一粒の砂、高性能の拡大鏡に生じた一つの亀裂よりも、はるかに厄介な錯誤をひき起こすだろう。

ところが、その彼にも、忘れられない女性が一人だけいるのだ。その女性こそ、いかがわしい女として記憶されている、いまは亡きアイリーンアドラーだ。


O・ヘンリ短編集(新潮文庫)を読んで、大久保氏の虜になりました。こちらもおすすめ。(お話としては「手入れの良いランプ」が好きです)

・大久保氏は他にも「風と共に去りぬ」「ジェーン・エア」「大地」「怒りの葡萄」など有名な文学作品を多数翻訳しています。私にいつか大きなエネルギーが湧いてきたら読んでみたいです。そうでなくても「トム・ソーヤーの冒険」くらいは読みたいです。

・好きな翻訳家
大久保康雄(シャーロック・ホームズほか)
村岡花子(赤毛のアンシリーズ)
清水真砂子(ゲド戦記シリーズ)


7ドラゴンライダー外伝 アラゲイジアの物語」Christopher Paolini

<キーワード>ドラゴンライダーシリーズ

<あらすじ>アラゲイジアを離れて1年。次世代のドラゴンライダーを育てるため、新世界のリーダーになったエラゴンの視点で描かれる3つの物語。

<感想>

・中学生のときに夢中になったファンタジー小説ドラゴンライダーに外伝が新しく出た、ということで読みました。

・期待したほどではありませんでしたが、エラゴンやサフィラが元気にしているのを知ることができて良かったです。また、シリーズを読み返したいなあと思いました。


8これは経費で落ちません!11」 青木祐子(原作)、森こさち(漫画)

<キーワード>

<あらすじ>
第29話:織子との不倫関係を続ける勇太郎にモヤモヤする森若さん。
第30話:元トナカイ化粧品の槙野は、相変わらず熱意をもって仕事をこなしているようだが、彼の「日帰り出張の多さ」が経理部で問題視され…。
第31話:太陽がイベントの仕事で東京に来ることに。久しぶりに直接会えるとひっそり浮かれる森若さんだが、イベントの取材で元カノと会ったと聞いて動揺する。

<感想>

・今回も良かったです。上司の勇太郎さんが良いし(女性読者のファンが付きそうですよね)、勇太郎さんと森若さんの関係も仲間という感じが良い。


9クコツキイの症例 上下」リュドミラ・ウリツカヤ

<キーワード>ソ連 家族

<あらすじ>古くからの医師の家系に生まれ産婦人科医となったパーヴェル・クコツキイが結婚の相手に選んだのは疎開先の病院で手術をした患者のエレーナだった。エレーナを娘のターニャと共に家族としてむかえたパーヴェルは、堕胎が違法だったソ連で女性を救う中絶手術に賛成で、いつ逮捕されるか分からなかった。夫婦の関係は少しずつゆがんでいき、思春期に入ったターニャは冷徹な科学の世界に反発して家を出ていく…。恐怖政治といわれたスターリン時代を背景に、いくつもの傷をもつひとつの家族が人間の生と死の問題をつきつけられる。

<感想>

・尊敬するリュドミラ・ウリツカヤ先生の小説。これまでに読んだ本:緑の天幕通訳ダニエル・シュタイン

・堕胎がテーマかと思いきや、そういうわけではありませんでした。「一人ひとりの見方」が一番大きなテーマだったと思います。登場人物それぞれが違った個性的な感覚を持っています。家族のなかでも世界の見え方・捉え方がまったく違うのです。話が進むにつれ、家族は精神的に分断していきます。最初は仲良く暮らしていたのに、ゆるやかに崩壊していく。その様子を追うのは辛かったです。

・家族は分裂していくのですが、最後にはなんとなくまとまりがありました。家族は何かしらの絆があるものなのだ、という感じ。ポール・オースターの「ブルックリン・フォリーズ」を思い出しました。


10自分でつくるAccess 販売・顧客・帳票管理システム」きたみあきこ

<キーワード>Access 初心者

<あらすじ>お客様情報や商品情報を1つにまとめ、受注・納品までを一括管理する販売管理アプリケーションを作る。1冊を通してデータベースシステムの開発を体験していく。商品管理や顧客管理のデータベースを内包した、小さな会社やお店で実際に活用できるような「販売管理システム」を構築します。Excelの経験はあるけどAccessは使ったことがない、という方のために基本操作から分かりやすく解説していきます。

<感想>

・仕事でAccessが必要になり勉強のため読みました。Accessの考え方がよくわかりました。


11映像制作のための自宅で整音テクニック」三島元樹

<キーワード>サウンド ミックス

<あらすじ>映像クリエイターが自分自身で音声編集もある程度行えるようになるための知識や実作業を解説。

<感想>

・YouTubeにアップしている動画の音質を改善したくて読みました。「映像制作のための」とありますが、Podcastなどオーディオデータだけを扱う人にとっても役立つ内容です。

・ファイルの形式、規格、設定など基本的な情報から学べてよかったです。機材の選び方やセッティングの注意点も詳しく書かれています。一番知りたかった整音の方法も具体的で勉強になりました。

・作者の宅録環境に強いこだわりが感じられて面白かったです。


12桜井政博のゲームについて思うこと」桜井政博

<キーワード>ゲーム コラム

<あらすじ>カービィとスマブラとメテオスの生みの親。そのアタマの中。週刊ファミ通にて連載中のコラム1年分が一冊の本に。

<感想>

小学生や中学生のときはよくゲームで遊んでいましたが、今はほとんどしません。それなのに一年ほど前からYoutubeチャンネル「桜井政博のゲーム作るには」を追いかけています。たまたまYoutubeのおすすめに流れてきたのを見てハマりました。ものを作るときの考え方、プレイヤーとの関係、チームで働くときのポイントなどが、ゲーム好きでない私にも興味深く、参考になります。というわけで、桜井さんが過去に書かれた本も読んでみることにしました。

・良かったです。ゲームを遊んだ人に楽しんでほしい、ゲーム業界がより良くなってほしい、という気持ちを強く感じました。

・この本は週刊ファミ通の2003年-2004年の連載コラムで、ちょうど桜井さんがハル研究所(ゲーム制作会社)を辞めて独立されたときの回もありました。どういった意図で独立したのか、何をしたいと考えているかなど、興味深く読みました(ハル研、辞めます!)。

・ゲーム屋さんでアルバイトをしたお話(ゲーム店員・桜井政博)、山のように買って遊んだゲームソフト(引っ越しとゲームソフト)、こだわりのデスク(スゴい机)など、個人的な話も楽しかったです。優れたユーモアをお持ちなので、軽い読み物としても面白い。

・桜井さんは分析眼が優れていると思います。感覚や考えを言葉にするのがとても上手い。いつも「すごいなあ」と思いながら動画を見ています。私は「ものの見方が普通とは違っていて、しかもそれを言葉にするのが上手い人」を尊敬しています。桜井政博さん、結城浩さん、伊藤亜紗さんは尊敬の対象です。

・桜井さんの著作は他にもあるので、また読みたいです。
 桜井政博のゲームについて思うこと 2
 桜井政博のゲームについて思うこと 3
 桜井政博のゲームについて思うこと 4
 桜井政博のゲームについて思うこと 2015-2019
 桜井政博のゲームを作って思うこと
 桜井政博のゲームを作って思うこと2
 桜井政博のゲームを遊んで思うこと
 桜井政博のゲームを遊んで思うこと2

・ちなみに、大学生のときに任天堂の社長・岩田聡さんについて書かれた本「岩田さん」を読んだことがあります。こちらもおすすめ。


13映像研には手を出すな!1-8巻」大童澄瞳

<キーワード>漫画 アニメーション

<あらすじ>ストーリー 大のアニメ好きで空想ばかりしている女の子・浅草みどり。 彼女は、中学時代からの同級生で金儲けに異様な執念を燃やす金森さやかと芝浜高校へ進む。 そこで、カリスマ読者モデルながら、実はアニメーター志望の水崎ツバメと出会い、3人でアニメ制作に乗り出す。

<感想>

・面白くて最新刊まで一気読み。ストーリーやキャラも良いのですが、何より絵がいい。作り込まれた設定、高校の秘密基地感にワクワクします。作者は飛行機が好きそうですねえ。(宮崎駿っぽい)

・ぶっとんだ感じは有川浩の「キケン」を思い出します。あれも面白かったなあ。


14「クレイジー・リッチ・アジアンズ」Kevin Kwan

<キーワード>恋愛 家族 アジア人

<あらすじ>恋人ニックに誘われて彼の故郷シンガポールを訪れたレイチェルは、彼がアジア屈指の名家の御曹司であることを知る。突然セレブの世界へと足を踏み入れたレイチェルの驚きも束の間。ニックの母や家族親戚には金目当ての交際と思われ、社交界のセレブ女子からの嫉妬は深く、二人の仲を引き裂こうとする。

<感想>

・以前、愛読していたnews letter「True Story」で、一般的なアジア人のイメージを覆す作品として紹介されていました。映画が良かったので、原作も読んでみることに。映画も本もどちらもすばらしいのですが、本は、映画で割愛されたエピソードを知ることができて良かったです。登場人物の設定、ニックの心情、特にニックの従姉妹・アストリッドにまつわるストーリーがとても良かったです。

・アストリッドの元婚約者チャーリーの心理描写は悲しすぎます。

チャーリーは自分の無力さを感じると同時に、自分が置かれた状況のバカバカしさに苛立った。セクシーな元婚約者とジャンク船でロマンティックなセーリングを楽しむはずが、彼の肩に顔を埋めた彼女の涙はほかの男のためなのだ。何たる運命だろう。
「彼のことを本当に愛しているんだね」チャーリーは穏やかに尋ねた。
「ええ、もちろん愛しているわ」アストリッドがまたもむせび泣いた。

巡航中、チャーリーの心は揺れ動いていた。アストリッドをセーリングに誘ったのは、彼女に告白したいことがあったからだ。これまでずっとアストリッドを愛し続け、婚約破棄の翌年の結婚は、単なるリバウンドに過ぎないと彼女に告げたかった。自分はイザベルを愛したことなど一度もなく、そのせいで結婚は最初から破綻する運命だったと。アストリッドに知ってもらいたいことはたくさんあったが、伝えるのが遅すぎたとチャーリーにはわかっていた。

しかし、少なくとも彼女は一度は自分を愛してくれた。自分は、十五歳の時から愛し続けた少女と過ごした素晴らしい四年間があれば生きていける。教会の青年部でビーチに出かけた十五歳のあの日、美しい声でカート・カイザーの『パス・イット・オン』を歌うアストリッドに心を奪われたのだ。チャーリーは焚き火の篝火(かがりび)に照らされた彼女の美しく波打った髪が赤と金に輝いていたのを今もはっきり覚えていた。甘い歌声を響かせるその姿はまさに、ボッティチェリが描いたヴィーナスのようだった。

・本作で描かれるのはただのRichではなく、Crazy Richです。本でも映画でも、そのあたり楽しんで頂きたい。

・原作は3部作であり、続編が大変気になります。日本語訳は1巻しか出ていないので、2巻は洋書に挑戦してみようかとも考えています。


15「環と周(たまきとあまね)」よしながふみ

<キーワード>漫画 愛

<あらすじ>家族、恋、友情、さまざまな関係性で綴られる好きのかたち。
現代編:中学生の一人娘が同級生の女の子とキスをしているのを目撃して動揺する妻。実は夫にも、かつて同級生の男の子を好きになったことがあった。
明治時代編:大切なお友達になった女学生の環と周。周の縁談が決まり二人は離れ離れになる。
70年代編:病気で余命わずかと知った環は、同じアパートに住む少年と出会い交流が始まる。
戦後編:復員兵の周は元上官の環と再会し、闇市で一緒に店を始めるが、環には秘密があった。
江戸時代編:周の夫を斬った相手は、幼馴染みの環だった。仇討ちのため再会したことから、二人の運命が変わり始める

<感想>

・「きのう何食べた?」を描いたよしながふみさんの作品。大学生のとき、料理がテーマということで興味をもち「きのう何食べた?」を読み始めましたが、人間模様の描き方がすごく良くて、料理よりそこが気に入りました。今はドラマのSeason2を見ています。

・さて、この「環と周」という作品も良かったです。悲しみのなかに見出される希望や思いやりが良かった。あらすじから「愛の形」がテーマなのだと思っていましたが、私は「ふとした暖かさ」だと感じました。

・特に印象的なのは、戦後編。

・5つの短編すべてに環(たまき)と周(あまね)という登場人物が出てきます。一応、環と周が輪廻転生している設定なのですが、私には短編それぞれがまったく別の物語に感じられました。


16「大奥1-3」よしながふみ

<キーワード>漫画 男女逆転 愛

<あらすじ>男子のみを襲う謎の疫病が国中に流行り、男子の数が激減。男女の立場が逆転した世界に生まれた貧乏旗本の水野は、大奥へ奉公することを決意する。美男が集められた女人禁制の場所・大奥。

<感想>

・よしながふみさんの作品ということで読みました。面白い。人々の情念を感じる。

・ところどころ残酷で刺激的な描写があるので、心の準備が必要です。


17「愛の旋律」アガサ・クリスティ

<キーワード>音楽家 愛 才能

<あらすじ>二人の女性を愛し、音楽家としての才能に翻弄された天才音楽家の愛と苦悩を描く。

<感想>

・クリスティは「メアリ・ウェストマコット」というペンネームで6冊の小説を書きました。大学生のときに読んだ「春にして君を離れ」があまりにすばらしかったので、ウェストマコット名義で書かれた他の作品もぜひ読んでみたいと思っていました。

・さまざまな登場人物の報われない思い、そして後悔。読んでいて苦しい。

ジェーン

「ヴァーノンはまれに見る天賦の才能を持っていたわ。いえ、そうじゃないーーあの人の才能があの人を所有していたのよ。天才とは世界一苛酷な主人よ。それはあらゆるものを犠牲にせずにはいられないわ。あなたの見掛け倒しの幸福ですらも、それがヴァーノンにとって障害になれば、惜しげもなく捨てられなければならなかったでしょう。天才は仕えることを要求するものだからよ。音楽がヴァーノンを求めた、それなのに彼は死んでしまった。」

ヴァーノンの手紙

我々の運命は、ときにいかにも重たく感じられる。その影の前に我々はたじろぐ。僕は音楽から逃げようとしたーーしかし、音楽のほうでぼくを捕えた。ある人々が救世軍の集会で宗教に捕えられるように、ぼくは音楽に捕えられたのだ。これを悪魔的といおうか、神的といおうか?ぼくを捕えたのが神ならば、それは旧約聖書に表れている嫉妬深い神だーー僕がすがりつこうとしたものはすべて、ぼくから遠ざけられたーーアボッツ・ピュイサン……そしてネル……

ヴァーノン

「頭で理解していることじゃないーー人を捉えるのは盲目的な本能だ」

ヴァーノン

彼には母親を満足させることができなかったーー昔から。彼女はしょっちゅう彼を抱きしめ、涙を流し、お互いがすべてだといった。しかし母親がいわせたがっている言葉が彼にはいえなかったーーどうしても。

セバスチャン

「ぼくは自分の欲するほとんどすべてのものを持っている。ジョーを除けば。しかしジョーこそ、ぼくにとって、ただ一つの重要なものなんだからね。自分でも度しがたい馬鹿者だと思うが、どうしようもないんだ!ジョーとほかの百人の女の子との違いは何なのだ?たいした違いなんぞ、ありはしない。しかし、今のぼくにとっては彼女こそ、世界でただ一つのものなんだよ」

ジェーン

「たぶんそうでしょうね。ジョーはあなたとはいわば時を異にして生きているのよ、セバスチャン。あなたのパーティーにきていたスウェーデン人がとても的を射たことをいっていたわーー時において隔てられていることは、場所において隔てられているより、深刻だって。ある人とあなたとのあいだに時のずれがあると、二人はどうしても一緒になれないでしょうね。

セバスチャン

ジョーの顔は興奮したように上気していた。戦争に対する熱狂がジョーをとらえていることをセバスチャンは見てとった。ジョーばかりではない。それは一般的な現象だった。彼はジェーンとそのことについて論じ、なげいたものだった。戦争について報道されること、語られることに彼は吐き気を催した。"英雄にふさわしい世界"、"戦争を終わらせる戦い"、"民主主義のための戦闘"。実際は昔と同じ、流血の惨事にほかならないのに。なぜ、みんなはそれについて本当のことがいえないのだろう?

ジェーンは彼とは意見を異にしていた。戦争について書かれる"はったり"は不可避なのだ、と彼女はいった。いわばそれに必然的に伴う現象、人間に逃げ道を与える自然の便法なのだと。人は、冷厳なる事実の重みに耐えさせてくれる幻想と虚偽の壁を必要とする。私はそれを哀れだとーーいえ、むしろ美しいと思うとジェーンはいったーー人間が信じたいと願い、自分自身に大真面目でいって聞かせる偽りを、いとしく思うと。

・この作品も中村妙子さんの翻訳が良い。


18「経理になった君たちへ」白井 敬祐

<キーワード>仕事の全体像、スキル、キャリアパス

<あらすじ>経理という仕事は面白く、やりがいに満ちていて、キャリア面でも大きな可能性があります。「自分はどうしたいのか」を考えるきっかけとなり、将来の夢を描くための一助に。

<感想>

・経理財務を経験して4年近く経つ。耳にしたことはあるがよく知らなかった話題について学べた。わかりやすい。おすすめ