戦争と平和

平和や戦争反対なんて掲げるのはどうかしているかしら。何か大きなことをしなくてはならないの?(できそうもないけど)。私にできることなんてある?悩める相良有紀が少しずつ学んでいくページ。戦争に関わる本や映画などを紹介します。


戦争について学ぶ

戦争について学ぶにつれ、問題は複雑で解決困難に思えます。そうだとしても、戦争をさまざまな側面からみて理解することは大切だと思います。過去から現在にわたり世界中にあふれている悲しみを知れば知るほど、周りの人に優しくできるのではないでしょうか。それこそが平和に近づく着実な一歩だと思います。


影響力について

「私一人で何が変えられる?」自分の小ささと世の中の問題の大きさを比べて、無力感に襲われ絶望してしまうことがあるかもしれません。私にもそういう時期がありました。でも今はそんなふうには思いません。実際に何かを変えられようと変えられまいと関係なく、自分に与えられた力をつかって最善を尽くすことが大切だと思います。そんなふうに思わせてくれた本がケント・M・キース「それでもなお、人を愛しなさい」です。

私が大学時代に住んでいた寮のスタッフ・Adrianaさんはこう言っていました。「目指すところは遠くを見て、でも進むのはここから」と。Adrianaさんの言葉をよく思い出します。いつも自分の足元から始めるのです。


作品紹介

日本人である私は、小学生のときから第二次世界大戦についてたくさん学んできました。それは価値のある経験でしたが、もっと多方面から学ぶ必要もあると思います。原爆や特攻隊やひめゆり学徒隊だけでなく、さまざまな国のさまざまな立場の人々の視点から見れば、戦争とは何か、深く立体的に見えてくるはずです。

戦争に関わる本や映画などの作品を紹介します。戦争がメインテーマでないものもありますが、作品の一部として存在する"戦争"から感じられることも多いです。


サウンド・オブ・ミュージック

・ミュージカル映画の金字塔。舞台は第二次世界大戦のオーストリア。ナチスの侵攻にともない一家を取り巻く状況は苦しくなっていきます。この作品は純粋に音楽や物語を楽しんでもらいたいですが、時代背景を頭に入れておくとより理解が深まると思います。


風立ちぬ

宮崎駿監督が手掛けたジブリアニメ。舞台は東京。関東大震災から物語が始まります。主人公の堀越二郎は、零式艦上戦闘機(零戦)の開発者。空を夢見る少年が、戦争に突き進む日本で活躍するのは皮肉なことです。

シンドラーのリスト

ライフ・イズ・ビューティフル

小さいおうち

小さいおうち」中島京子
 戦前 東京 女中 家族 映画「小さいおうち」 明るく悲しい物語

この世界の片隅に

二つの祖国

フロントミッション

ドリーム

Hidden Figures」Margot Lee Shetterly
 アメリカ 黒人女性 NASA 計算手 差別 B29 アポロ計画 映画「ドリーム」

はだしのゲン」中沢啓治
 マンガ 広島 原爆

この子を残して」永井隆
 自伝 長崎原爆 医師 家族 妻の死 原爆症 子を残して死ぬ

いとし子よ」永井隆
 子どもに宛てて 生きること 反戦 未来

ご冗談でしょう、ファインマンさん」Richard Feynman
 自伝的エッセイ ノーベル物理学賞・ファインマン 児童向け 自由な発想 原爆マンハッタン計画

核兵器はなくせる」川崎哲
 新書 核兵器について概要 ピースボート

ノーモアウォー」Linus Pauling
 反戦 原爆 ノーベル平和賞・化学賞

ドローン情報戦」Brett Velicovich
 自伝 ノンフィクション ドローン兵器 テロリスト 手に汗握る

How to Have Impossible Conversations」Peter Boghossian, James Lindsay
 会話 信条の対立 分断

あの戦争から遠く離れて」城戸久枝
 ノンフィクション 満州 中国残留孤児 日本帰国 二人の母親 文化大革命

マイナス50℃の世界」米原万里
 ノンフィクション シベリアの生活 極寒

自閉症の僕が跳びはねる理由」東田直樹
 自閉症 苦しさ 言葉 意思と行動

不屈の小枝」Lauren Kessler
<キーワード>日系アメリカ人 第二次世界大戦
<あらすじ>20世紀初頭、アメリカン・ドリームに魅せられて、岡山からオレゴンに移民したヤスイ・マスオ一家。強制収容所送りなど様々な人種差別と闘いながら、尊敬されるアメリカ人になろうと苦闘したヤスイ家三代の記録。
<感想>
・山崎豊子さん原作「二つの祖国」のドラマを見て、日系アメリカ人の歴史に興味を持ちました。移民は大変な苦労をするものだと思いますが、敵性外国人となった彼らが直面した壁はそれ以上のもの。彼ら苦しみに心が痛みます。

ナショナル・ストーリー・プロジェクト1-2」Paul Auster編
<キーワード>アメリカ

李香蘭 私の半生」山口淑子
<キーワード>満州 女優
<あらすじ>満州で生まれ育った日本人・李香蘭(山口淑子)。歌手、女優、最後は国会議員。激動の時代を生き抜いた半生を描く。
<感想>
・2020年から満州の歴史に興味があり読みました。満州、中国、日本、アメリカ、様々な場所・立場で、時代を生きた彼女の人生は目まぐるしい。

アンの想い出の日々」L.M.Montgomery
<感想>
・短編の間に、ブライス一家の短い会話が挟まれています。アンは次男ウォルターが戦死した悲しみを詩に書いて家族に聞かせていました。少女時代とは明らかに違う大人のアンを感じます。子を亡くした親の悲しみは読んでいて切ないです。。

作家の使命 私の戦後」山崎豊子
<あらすじ>作家・山崎豊子が著作に関する、取材の苦労話や、執筆秘話、作品論を語る。「不毛地帯」「二つの祖国」「大地の子」「沈まぬ太陽」「運命の人」

The Spy Who Loved Me

Noreen Riols | Moth Mainstage | February 6, 2015 - YouTube イギリスの秘密組織で働いた少女。恋に落ちた人は任務から戻らなかった。

異常な正常さ(Unusual Normality)

Ishmael(イシメール)はシエラレオネで少年兵として戦った後、10代でニューヨークにやってきた。他の子どもたちと戦いごっこをするなかで、彼らがいかに幸せかを思う。遊びの無邪気さと彼の境遇が対照的で、余計に悲しくなります。

私は幸福や正常さなどまったく信じていなかったから、ニューヨークに来たとき、その普通から始める必要がありました。

I didn't trust in happiness or any kind of normality at all. So when I was in New York, with my mother, we needed to take a start with that normality.


到着するやいなや、私はすぐにその地形を記憶しはじめた。そしてこれは習慣によるものです。家まで何歩あるか、最初の木まで何歩あるか、最初の木立まで何歩あるか、小屋まで何歩あるか。木と木の間も知っていました。一晩中、みんなが寝ている間、地形を記憶するためにこれらを頭のなかで再生してみた。これは習慣から生まれたものです。以前の人生では、これは生きるか死ぬかを決めるスキルでした。

But as soon as we arrived, I began to memorize the terrain immediately. And this was from habit. I knew how many faces it took to the house, how many faces it took to the first tree to the first Bush to the shed. I knew the spaces between the trees. So overnight, while everybody was sleeping, I tried to replay some of these things in my head to memorize the terrain. This was coming out of habits because where I was coming from my previous life, this was life or death, this kind of skill set you can determine whether you live or die.


私は彼らに理解してほしかった。戦争ごっこをするだけで、実際に戦争をする必要がないのは、非常に幸運なことなんだと。彼らの素朴な無邪気さは、私にはもう持てないものでした。

I wanted them to understand also that, it was extremely lucky for them to only play pretend war and never have to play to do the real thing. This naive innocence that they have, but what was something that I could no longer have.

孤児移送作戦(Operation BabyLift)

ベトナム戦争で孤児になった3兄弟の長男。弟二人はアメリカ行きの飛行機に乗れたが、彼はベトナム警察によって出国を拒まれた。彼がアメリカで兄弟に会うまでの話。

永遠に思えるほどの時間が過ぎ、扉が閉まりエンジンが轟くのが聞こえ始めました。

But after what seems to me like an eternity, I started hearing doors closing and engine roaring.



5オッペンハイマー

<キーワード>原爆開発、伝記

<あらすじ>第二次世界大戦下、アメリカで立ち上げられた極秘プロジェクト「マンハッタン計画」。これに参加した J・ロバート・オッペンハイマーは優秀な科学者たちを率いて世界で初となる原子爆弾の開発に成功する。しかし原爆が実戦で投下されると、その惨状を聞いたオッペンハイマーは深く苦悩するようになる。冷戦、赤狩り―激動の時代の波に、オッペンハイマーはのまれてゆくのだった―。世界の運命を握ったオッペンハイマーの栄光と没落、その生涯とは。

オッペンハイマーが大学で教鞭をとり始めたのは株価暴落をきっかけとしたアメリカ史上最大の経済恐慌、大恐慌の始まった1929年だった。恐慌は世界に広がり、第一次大戦の賠償金支払いで行き詰まるドイツにヒトラー率いるナチスが現れる。ナチスは第二次世界大戦を起こし、当初、戦況を優位に進める。このドイツに負けまいとアメリカが完成を急いだ原爆は、1945年、日本を降伏させるだけでなく、一瞬にしてアメリカをかつてない超大国にさせた。ただ、その4年後にソ連も核実験を成功させる。米ソが核兵器で脅し合う冷戦の中で反共思想がアメリカでは一気に広がっていく。ヒステリックな「赤狩り」の渦中で、オッペンハイマーも共産主義者との過去が問われていく。

<感想>

ネットニュースでこの映画について取り上げいるのを読んで、慌てて映画館に観にいきました。もともと私は戦争と平和について関心が高いのと、物理学者ファインマンが著作「ご冗談でしょう,ファインマンさん」(第3章ファインマンと原爆と軍隊)でロスアラモス研究所のマンハッタン計画について書いていたのを読んで、マンハッタン計画について興味があったからです。

・この映画は予想以上のすごい作品でした。心が痛む映画。歴史は重いです。

・ファインマンはマンハッタン計画でも下の方に位置していたため、全体の規模や背景などは書かれていなかったたのに対し、この映画は主要メンバーであるオッペンハイマーの目線から描かれているため、何もないロスアラモスの地に街を作っていく過程や、全米の科学者を訪ね計画に引き込む場面などがあり、興奮しました。

・原爆投下に対する良心の呵責、国のために一生懸命働いたのに一変して共産主義の悪者扱いを受ける理不尽さ。オッペンハイマーの苦しさが伝わってきました。

・キャストも良かったです。オッペンハイマーの元恋人ジーン・タトロック役のフローレンス・ピューは、どこかで見たことがあるなと思ったら、「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」のエイミー役でした。どちらの役も影のある感じが印象的です。

本戦争(The Book War)

文化大革命の中国で少女たちはこっそり禁書クラブを始めたが、禁止されてしまう。しかし本は焼かれても物語を語ることまで止めることはできなかった。本当に焚書があったなんて衝撃的ですし、本を禁止された時代で(精神面で)生き延びた彼らはすごいです。

本は燃やされましたが、物語を燃やすことはできませんでした。希望も。
Our books have been burned, but not our story. Not our hope.

画家・香月泰男

・2024年8月に家族旅行で山口県を訪れた際、山口県立美術館で開催されていた特別展「没後50年 香月泰男のシベリア・シリーズ」を観てきました。

・没後50年 香月泰男のシベリア・シリーズ
 特別展チラシ
 作品目録
 紹介文:現在の山口県長門市三隅に生まれた香月泰男(1911-1974)は、東京美術学校(現・東京藝術大学)で油彩画を学び、卒業後は北海道、次いで郷里の山口で教鞭をとりながら制作に励みました。新進の画家として頭角を現し始めた矢先の1942年12月、香月のもとに召集令状が届きます。およそ4年半にわたった、太平洋戦争への従軍と戦後のシベリア抑留。復員後、香月はその体験を油彩画に描いていきます。それらはやがて「シベリア・シリーズ」と呼ばれるようになりました。57点の油彩画からなるシベリア・シリーズは、それぞれの作品が独立した絵画としての魅力を備えつつも、その全体像をとらえた時、圧倒的な存在感をもって見る者に迫ってきます。本展では、香月泰男の没後30年を記念して、代表作のシベリア・シリーズ全点を公開し、彼の画業を改めて回顧します。さらに、作品に寄せた画家の自筆解説文をあわせて紹介し、戦争と抑留の記憶を見つめつづけた香月の心の動きをたどります。

・感想:
 全作品に本人による紹介文がついていました。香月氏の心情が読めて良かったです。作品は香月氏が経験した時系列順に並べられており、終戦後にどこかへ連れて行かれながら「自分たちはどうなるのだろう」と不安に思う気持ちや、シベリアでの過酷な現実、帰郷できるときの喜びが、私のなかにも順番に現れてきました。
 シベリア抑留の事実は知っていましたが、それに関する本や作品を見たことはなかったので、今回の展示会は勉強になりました。補足資料としてシベリア抑留に関する記録も展示されていました。それによると、日本兵よりも圧倒的にドイツ兵のほうが抑留された人数は多かったそうです。ドイツ兵のシベリア抑留記などがあれば読んでみたいです。体験談ではありませんが、これなど良いかも→富田武「シベリア抑留―スターリン独裁下、「収容所群島」の実像」。